教材準備マニアの私がAIで授業準備を時短した方法

2025年12月5日

「もっと楽しい授業にしたい」その一心で、1日10時間以上をスライドや配布プリント作りに費やしていた時期がありました。睡眠や家族との時間を削ってでも、教材準備に没頭してしまうタイプのいわゆる「教材準備マニア」です。

この記事では、そんな私が生成AIをはじめとしたツールを取り入れることで、授業準備の時間をギュッと短縮しつつ、授業の質や楽しさは落とさないようにしてきたプロセスをまとめます。

「授業準備に毎晩追われている」「スライド作成に時間がかかりすぎてしんどい」「AIに興味はあるけど、何から触ればいいのかわからない」そんな先生に向けて、

  • 私がかつてハマっていた「教材沼」の実態
  • どこにムダがあったのかという振り返り
  • AI時代の今、どこをツールに任せるようになったか

をお伝えします。「効率」と「楽しさ」を両立しながら授業準備を時短したい先生のヒントになればうれしいです。


教材準備に1日10時間──「もっと楽しい授業」の裏側で起きていたこと

少し前までの私は、「どうしたらもっと生徒が楽しめる授業になるだろう?」という思いだけで、1日あたり10時間近くを教材準備に使っていました。授業時間は60分なのに、その裏側で何十時間もスライドやプリントに費やしていた時期です。

画力はあまりなかったので、まずは使ってもよいイラスト素材を探すところからスタート。有名なフリー素材サイトや、有料のストックイラストサイトを行ったり来たりしながら、イメージにぴったり合う画像を探し続けていました。

ようやく素材が揃ったら、今度はPowerPointでスライド作成。見出し・レイアウト・フォント・配色……細かい部分が気になって、1枚ずつ「ああでもない、こうでもない」と調整を続けます。アニメーション機能を使って生徒にクスッと笑ってもらえるような演出も考えました。

さらに、喋るべきことをすべてカバーするために、スピーカーノートはもはや「朗読台本レベル」。小テストや配布資料も全部手作り。こうして完成した渾身のスライドは、授業で使うとあっという間に60分で終わってしまいます。

その代わりに失っていたのは、睡眠、家族との時間、娯楽、友だちとの食事などの「人間らしい暮らし」のほうでした。

当時の教材づくりルーティン

  • 授業全体の構成をざっくり設計する
  • 1枚ずつスライドタイトルや見出しを考え抜く
  • イラスト素材や写真をあちこちから集める
  • スライドデザイン・レイアウト・アニメーションを作り込む
  • 話す内容を1ページごとに台本レベルで書き出す
  • 最後に小テストや配布プリントも自作する

これらすべてを、ほぼ「手作業」で行っていたのが、私の教材準備マニア時代です。


教材準備マニアがハマっていた「非効率ポイント」3つ

振り返ってみると、当時の私は「授業準備=全部自分でやるもの」という前提に縛られていました。その結果、次の3つのポイントで大きく時間を浪費していたと感じます。

1. イラストや素材探しにかける時間が長すぎた

「ぴったりのイラストが見つからない」「このスライドだけ雰囲気が合わない」などと悩んでいるうちに、気づけば1〜2時間が平気で吹き飛びます。しかも、同じ授業でしか使わない可能性がある素材に、かなり時間とお金を投じていました。

2. スライドの見た目にこだわりすぎていた

配色やレイアウトを整えること自体は悪いことではありません。ただ、「前回より面白く」「もっとオシャレに」と追い求めるほど、授業の「本筋」からどんどん離れていってしまうこともあります。

今振り返ると、生徒が理解しやすい構成や言葉選びよりも、「デザインの細部」にエネルギーを使いすぎていました。

3. 台本づくりをすべて手打ちでやっていた

スピーカーノートを台本レベルで書くのは安心感がありますが、授業時間が増えるほど、その負担は雪だるま式に増えます。特に「言い回しを少し変えただけ」の説明文を何度もゼロから書いていたのは、今思うとかなり非効率でした。


AIとの出会い──「欲しい教材素材を自分で生み出せる」時代へ

そんな「教材沼」の真っ最中に、私が最初に衝撃を受けたのが生成AIによるキャラクターイラストの大量生成でした。

きっかけは、「絵師さんに描いていただいたイラスト数点をAIに学習させて、そのタッチのキャラクターを大量に作る」というお仕事をお手伝いしたことです。元の絵をもとに、衣装・性別・表情などが少しずつ違うキャラクターが、次々と生み出されていく光景は圧巻でした。

もちろん、その絵師さんは「AI学習用のイラストを描く」という前提でお仕事を引き受けてくださっており、無断学習ではありません。この点はとても大事なポイントです。

この体験をきっかけに、私はこう考えるようになりました。

「AIが欲しいイラストや素材を作ってくれるなら、今までの『探す時間』を授業づくりそのものに回せるんじゃない?」

ここから、AIと教材準備の組み合わせに強い興味を持つようになりました。


AI時代の今、授業準備をどう時短しているか

現在の私は、当時と比べると教材準備にかける時間は大幅に短縮できています。それにもかかわらず、スライドの枚数はむしろ増え、授業時間が長くなっても対応できるようになりました。

AIをはじめとするツールを取り入れたことで、「手を動かす作業」から「何をどう伝えるかを考える時間」へと、意識の中心が移った感覚があります。実際に行っている工夫を、3つに分けて紹介します。

1. イラスト・図解は「探す」から「生成する」へ

以前はフリー素材サイトや有料サイトを延々とさまよっていましたが、今は次のように考え方を変えました。

  • まず「どんな場面・どんな感情のイラストが欲しいか」を文章で整理する
  • その文章をもとに、画像生成AIやテンプレ付きデザインツールで素材を作る
  • 必要に応じて、細部だけを修正・調整する

これだけで、「合う素材が見つからない」という時間がかなり減りました。

私は、イラストの生成をChatGPTでデビューしました。本当に文章から画像が生成できることに感動したものです。そのうちに、画像生成にもプロンプトのコツがあることを知っていきます。ぜひ、画像生成に多くの解説を割いている本を一冊、読んでみてください。プロンプトが変わるはずです。

画像に少し文字を足したり、一部を切り取ったりするのはCanvaが便利。こちらも、辞書として機能するような一冊を手元に持っておくと安心です。

2. スライド構成や見出し案はAIに叩き台を出してもらう

授業のゴールや生徒に身につけてほしい力をAIに伝え、「このテーマで45分授業をするとしたら、スライド構成案を出して」とお願いすると、トピックの流れや見出し案をサクッと出してくれます。

もちろん、そのまま使うのではなく、自分の経験や生徒の実情に合わせて手直しすることが前提です。でも、「最初の白紙状態から考える」という負担はだいぶ減りました。

画像生成は、私はChatGPTでデビューしました。本当に、文章からイラストが出てくるのに感動したものです。そのうちに、画像生成向けの文章にコツがあることも学びました。ぜひ、関連書籍を一冊だけ読んでみてください。読み終わるころ、画像生成のプロンプトが変わるはずです。

画像にちょっと文字を入れたり、切り抜いたりするのはCanvaが便利。こちらも、辞書として機能する一冊を手元に置いておくと便利です。

3. 台本や小テストは「ゼロから書かない」のがルール

説明文や小テストの問題文も、今はゼロから全部書くのをやめました。代わりに、

  • 授業のテーマや対象学年
  • 生徒の理解度の目安
  • 入れたい重要用語・キーワード

などをAIに渡し、「この条件で小テスト3問のたたき台を作って」と依頼します。そのアウトプットをベースに、表現や難易度を調整していくイメージです。

などを比較検討しながら、「一番よく使う作業」にフィットするものを1〜2個だけ選ぶと、ムダな学習コストを減らせます。


教室でしか味わえない「生徒の反応」は手放さない

AIやデジタルツールがどれだけ進化しても、教室でしか味わえない喜びがあります。それは、生徒のリアルタイムな反応です。

用意したネタで笑ってくれる。新しい概念に出会って「なるほど」と声が漏れる。紹介したアプリやサービスをその場で試して、感想を教えてくれる。その一つひとつは、教材準備マニアにとって最高のご褒美でした。

私は今も、授業の途中で生徒の反応を見ながら、話す内容を足したり引いたりします。一緒にネット検索をして、最新の事例をその場で調べてみることもあります。「今、伝わっている」「今、楽しんでもらえている」という感覚は、AIでは代替できません。

だからこそ、AIに任せるのはあくまで「作業」の部分。「何を伝えるか」「どうやって生徒と一緒に考えるか」は、これからも人間である私たち教師の仕事だと感じています。

ゆとりができたからこそ、今私は授業冒頭のアイスブレイクを考えることに時間を割いています。いきなり本題に入ると、みんな気持ちができていません。軽い無駄話をするだけで、そのあとの惹きつけ方が変わります。

アイスブレイクの専門書もあるので、少し時間ができたらぜひ、アイスブレイクにこだわってみてください。


まとめ:AIで「考える時間」を取り戻そう

改めて、この記事のポイントをまとめます。

  • かつての私は、1日10時間を教材準備に費やす「教材準備マニア」だった
  • 一番時間を奪っていたのは、素材探し・スライドの作り込み・台本づくり
  • 生成AIやデザインツールを取り入れ、「探す」「ゼロから書く」を減らしたことで、作業時間を大幅に短縮できた
  • 浮いた時間を「何をどう伝えるか」を考えることに回すことで、授業の質や楽しさはむしろ上がった
  • AIがどれだけ進化しても、生徒のリアルタイムな反応を受け取り、授業を組み立てるのは人間の教師の役割である

教材準備に悩む先生方へ。「効率」と「楽しさ」は、必ずしもトレードオフではありません。AIを上手に味方にすることで、「本当に考えたいこと」に時間を使えるようになる可能性があります。


次の一歩:今日からできる小さなアップデート

記事を読み終えた今、もしよければ次のうち1つだけでも実践してみてください。

  • 次回の授業で使うスライドのうち1枚だけ、AIに構成案や見出し案を出してもらう
  • イラストやアイコンを1つだけ、素材サイトではなく画像生成AIやテンプレツールで用意してみる
  • 小テストの問題文1〜2問だけ、AIに叩き台を作ってもらい、自分で仕上げてみる

小さな一歩でも、続けていくうちに「授業準備の当たり前」がじわじわと変わっていきます。この記事が、あなたの授業準備を少しでもラクにし、生徒との時間をもっと楽しめるきっかけになればうれしいです。